|
●目次● ●第1回● ●第2回● ●第3回● ●第4回● ●第5回● ●第6回● ●第7回●
皆さんならご存知の通り、2001年5月、日本初のインターナショナルラリーが開催された。当然のことペースノートラリー。木曜日は全ステージ2回のレッキが行われ、システム自体はWRCのそれとまったく同じものだった。ここで、ペースノートを作成し実際に走ってきたのでそれを例にしながら、ペースノート講座最終回としよう。
★★アルペンラリーのステージについて★★
海外ラリーでは各国のラリーステージは文字どおり千差万別。日本からみると似たようなイメージで捕らえがちな”インドネシア”と”マレーシア”でも実際走ると結構違う。それぞれの国にはそれぞれの国らしいステージが用意されているのがラリーの面白さ。今回のアルペンラリーはターマックで非常にコンパクトなコース設定だったが、ある意味すごく日本らしいステージだった。短いステージは2km未満長くても10km弱のステージ構成、また、ステージアベレージも60km/h前後と海外のラリーと比較すると非常に低速コースの部類となる。また、道はばも狭く巻き込んだコーナーが多いためライン取りの重要度も比較的低い。今回のステージを一言で言うなら『ストレートが少なくライン取りの出来ない加減速とコーナリング勝負の道』。そういうラリーステージではペースノートの依存度は比較的小さくなりがち。いかに目の前のコーナーをロスなくクリアできるかというドライビングスキルやマシンセッティングがタイムを左右するからだ。
とはいっても、やはり知らない道をロス無く全開で走るためにはペースノートは非常に重要。ペースノートが無かったらとてもあんなスリッピ-な雨の中怖くて攻められない。
★★ペースノートの作り方★★
前述したようなステージの特徴を踏まえて、ペースノートは『できるだけシンプルに』を心がけて作成した。今回のようにトリッキー(連続した)なステージではコーナーを抜けたらすぐ次のコーナーという具合にあっという間に数コーナー駆け抜けて行ってしまう。こんなとき細かく情報を羅列していったって役に立たない。むしろコドライバーが読み遅れたりロストしたりの原因となりやすい。常に本番中のスピードをイメージして書きすぎを抑えるのがポイント。
今回のようなステージ(日本特有の)で大事な情報は3つ、
1.コーナー角度(ベンド)
2.コーナーの長さ
3.コーナー後半のアクセル開度
である。1,2に関しては今までのPN講座での説明のとおりであるのでお分かりいただけると思う。補足するなら、日本の道は次のコーナーまでに十分スピードが乗っておらず加速中のこともおおい。こんなときはベンドを正確に表現するのに一生懸命になるより”ジャスト”などと表記して軽く聞き流すのもコツ。とにかく頭の中のメモリーを”次に攻めるべき大事なコーナー”のために開けておくことのほうが重要なのである。
3は分かっていただけるだろうか?コーナーの出口でアクセルを全開にできるのか?先が少しきつかったり、滑りやすかったりでわずかにアクセルを抜く必要があるのか?を表現するべきだということである。立ち上がりで『アクセル抜かなくてもいけたな』とか『立ち上がり踏みすぎてこぼれそうになって、結局アクセルを全部戻した』とかで微妙にタイムロスした経験はあるでしょう。実はこの積み重ねがタイム差になっているんです。たぶん、知っているコース、知らないコースでのタイム差は案外これがうまく出来ているかどうかの差だったりすることもるでしょ。全開コーナーは『プラス』反対は『マイナス』などと補助語をつける人もいる。この辺は各自イメージしやすくてシンプルな言葉を工夫してください。
★★コドライバーとのコンビネーション★★
今回、コドライバーはエドモンド・リムというマレーシア人だった。プロフェッショナルとしては活動していないが、いろいろなドライバーと組んだことのあるベテランコドライバーだ。彼とはテインスポーツ時代チーム名とだったこともあり顔見知りだが、コンビとして組むのは初めて。私のPNは英語なのでその点のコミュニケーションの大部分は問題ないが、細かなシステムはやはりドライバーごとに違うため事前に打ち合わせは必要だ。たとえば、ベンドの数字はR、Lの前に置くのか後に置くのか、補助語はどういうものを多用するのか、などである。ただし読むタイミングは特に話し合わなくても大丈夫だった。その点はさすがに経験豊富なコドライバーだ。ただし、通常、レッキの2回目でもあまりスピードを出せないケースが多いため、どのようなタイミングで読むかは本番を走ってみて初めて試すということが多い。事前に練習コースで読みの練習は最低でもしておくことをお勧めする。
★★レッキで★★
レッキでは、レギュレーションで”グループN相当の車”と義務付けられている。カラーリングどころかステッカーも一切禁止。本来ならシートベルトやバケットシートまで内装飾と同系色と謳われるほどだ。レッキ中はスピードも30km/h以下とか極端に抑えられているから、何も特別なレッキ仕様の車など必要ない。ノーマルカーを準備すればよい。もちろん、グラベルで道の悪いステージがあるようだったら強化サスペンションとアンダーガードは欲しいところだが・・・。
スムーズにペースノートを作れるために、ヘッドセットタイプのインターコムはお勧めする。もちろんノーマルカーだったら室内は静かなので無くても事足りるが、あればよりノートを作るのも聞くのも集中できる。これが本番のための結構いいトレーニングにもなっているんだ。
それから、アベレージが90km/hとかの高速ステージでは100m以上の直線も結構出てくる。このようなときはトリップ計で正確な距離を測ったほうがいい。つまりそういうステージがありそうだったらレッキ車にトリップ計は欲しい装備だ。
そうそう、オフロード4WDタイプの車は視点が高くなってクレストなどの道の形状が違って見えてくるのでなるべく避けたい。そうはいってもアジアのラリーではこの手の車のほうが良かったな、なんて思うほどの悪路もあったけど。
★★実戦編★★
実際にアルペンラリーで使用したノートを例にとってみよう。冒頭のとおり今回のPNはすごくオーソドックスでシンプルなものにまとめるようにしたので、あまり特徴的な表現を用いていない。ただ、それでも比較的特長的なところを挙げてみた。
●SS1/SS4●
○ flat 5R /C (フラットファイブライト・オーバークレスト)
→『フラット』とは『全開!』の意味。皆さんの練習コースでクレストや周りの景色の影響でついついアクセルの戻りがちな場所ってありません?そんなところにこの『フラット』っていう言葉は効きます。このようないわばペースを表す言葉を効果的に入れることでPNの世界に入っていける(集中できる)こともあります。
○ C 40 4L 100
→ここは手前からだとまったくクレストの先が見えない。だが、クレストの次のコーナーが4Lでその先が100mのストレートなのでできるだけクレストの後の4Lは的確に攻めたい。こんな時クレストのあとの距離は正確さが大事だし、その距離をイメージしてスピードセーブできるドライビング練習も必要。
○ ! 4R ≫2 (フォーライト・ダブルタイトゥン・トゥー)
→ここは西尾選手のコースアウトしたちょっと難しいコーナー。それまでと急に道が狭くなったりきつくなったりと雰囲気の変わるところはコーションをうまく使う。もちろん情報は入れすぎずシンプルなほうが効果的。
●SS7/SS8
○ Lg 5L /80 keep middle(ロングファイブレフト・オーバーエイティ・キープミドル)
→一見、長い表現のようだが、このコーナーはロングなのでPNを読んで聞く時間的余裕はある。『長さ80mの5の左コーナー、道路の真中を走れ』という意味。80mという具体的な長さを入れることで、アクセルをムダなく出口に向かって全開にしてゆくことができる。また、このコーナーは若干オーバークレスト気味だったので、インにつきたくなるが、イン側にはずっと側溝が続いていて危険。そのためにkeep middleを付けている。
○ kink L・R (キンクレフト・ライト)
→kink L・kink R をセットにした造語。kinkとはほとんどステアリングを切らずにまっすぐいけるちょっとした曲がり。ここでは手前に80mの直線があって次の『Lg 2L』 の進入ポイントが分かりにくい。そのためにすばやく2Lをジャッジできるように手前の道の特徴を表記している。
●SS10/SS11
○ Lg 5R /80 >exit (ロングファイブライト・オーバーエイティ・タイトゥンイグジット)
→高速の長いコーナーでアクセルを開けたり戻したり、そんな経験はないだろうか。長い高速コーナーを攻めきるには正確な情報は非常に重宝する。ここの例では『5の右、長さ80m、出口きつい』という情報が盛り込まれている。したがってコーナー進入してから60mくらいまではブレ-キングせずに無駄なく攻めていけるためたいむロスも最小限になる。
○ 3L line
→『line(ライン)』というのは『アウトインアウトのラインをとる』という意味で時々使っている。たまたまそのコーナーの前後で道幅が若干広かったり、次のコーナーアプローチを考えたりしてそうしたほうがいいときに使う。もちろん『ワイド』と表記しても良いが『広い=ライン取り』と考えさせるよりは『〜ラインを取れ』という直接的な言葉のほうが、実戦中頭のメモリーを無駄使いしないし一瞬の判断も速い。
★★最後に★★
いままで、数回にわたってペースノート講座をやってきましたが、結局ペースノートの目指すところは一つ。各SSを完璧に攻めきること。そのためにはどんなシステムだって、どんな言語だってかまわないはず。ただし、何度もやっていればシステムは違っても結局似たような表現が欲しくなってくるのもの。そんなときにまた読み返してヒントとしてもらえれば嬉限りです。目指せ!究極の『レーダー走法』。
●目次● ●第1回● ●第2回● ●第3回● ●第4回● ●第5回● ●第6回● ●第7回●
|