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目次● ●第1回● ●第2回● ●第3回● ●第4回● ●第5回● ●第6回● ●第7回● 

今回は応用編。ペースノート走行を練習すればするほど、「こういうときはどう表現すればいいだろう?」という疑問がきっと浮かんできたことだろう。そんなときにはボキャブラリーを増やして対処するしかないが、自分でイメージしやすい言葉を作り出してしまってもOK。ペースノートは言葉からいかに素早く、コースをイメージできるかが勝負だからだ。

今回は私がペースノート(以下PN)で使っているボキャブラリーを例として挙げているが、もちろんこれはあくまでも例に過ぎない。クレストについても「スモールクレスト」、「ダブルクレスト」や「ジャンプ」といったボキャブラリーがあることを解説しているが、もちろんこうした言葉である必要はない。「ディッチ」や「ラッツ」などは、ギャップやワダチといったほうが日本人同士ではとおりがいいだろう。
 ただし、「オープンタイトゥン」などは熟語として覚えてしまえば、複雑なステージでもスムーズにラインが見えてくるようになるだろう。ただし、あまり細かく言い過ぎてもSS走行中に聞けなくなってしまう恐れもある。どこまでボキャブラリーを使うかは、自らのPN走行の習熟度に合わせてグレードアップしていこう。
 さて今回はこうしたPNをグレードアップさせるキーワードのほかに、リタイアに直結してしまうようなPNにはあってはならない点についても説明しておきたい。

過ぎたるは及ばざるがごとし

欲を出していろいろと書き過ぎないこと。細かく書くとオーバーフローしてしまって、一番大事な部分を聞き逃すことにもなりかねない。『レッキは常に先を見て、ジャッジは早く』が鉄則だと依然書いたが、混乱したり疲れてくると目の前に視線が移ってしまってい細かく書く傾向にある。「本番中のスピードで走っている自分を意識しているか」といことを常にレッキ中に自覚するようにしよう。

オーバークオリティで気をつけたいのは、コーションも同じ。危険な情報を確実に入れるのは基本中の基本だけれども、だからといってやたらめったら「!」をつけるとコーションに慣れてしまう危険性が出てきてしまう。あるステージで連続して「コーション」が出てきたとしよう。「コーション」がついているので最初はスピードを落としたが、それほど危険でなかった。そんなことが続くと次に出てきたコーションに対しても『危ないのかもしれないけど、さっきがあんなもんだったから……』と甘く見てコーナーに突っ込んでいってしまう。そのときは運良くコースアウトを免れたとしても、走りのリズムを崩してしまうのは確実だ。「コーション」のようなボキャブラリーは、ここぞというときにうまく使ったほうがその言葉の意味が生き生きしてくるということも覚えておこう。

またレッキ中の心構えとしては、集中力の持続を一番に考えたい。楽しい山道が目の前に広がっていてもじっと我慢。「手前のコーナーをインカットして、その次は大胆にアウトから入っていって」なんて走り方をして、ドライビングを楽しんでしまったら重要な情報を書き忘れたり、PNのチェックが出来なくなってしまう。こうして楽しんでしまったところに限って本番のときにPNが合わなかったり、イン側の岩にタイヤをぶつけてパンクしたりと思わぬ落とし穴にはまることになる。レッキの時は我慢の走りでストレスがたまっても、本番でそれを爆発させるというのもタイムを出すテクニックかも?

最後はあまりに当然のことだが、書き漏らし・聞き漏らしは絶対ダメだということ。「タイトゥン」や「ドントカット」など書き漏らすと、即リタイヤだ。また、距離を長いほうに間違えると、スピードがのっている状況では非常に危ない。『本番でどういう状況になったら危険だろうか』ということを一度思い返して整理しておくといい。また本番中は『一字一句聞き逃すな』っていうことも肝に銘じよう。レベルが上がるにつれて、PNにある一字一句が重要なインフォメーションになる。ただし、「どれだけ聞き逃さずに走っているか」は他人にはわかりにくい部分。練習のときに聞けるようになっていても、本番中に本当に一字一句聞いていたかな? それを聞いてブレーキングしたり、ステアリング操作していたかな? を常に自問自答してみよう。そして頭が真っ白になりがちな本番でも、「PNをちゃんと聞くんだ!」とストレートのたびに自分に言い聞かせること。本番こそ最高の練習の場なんだから。

PNを聞きやすくするチョットしたテクニック

してはいけない点を解説してきたが、今度はこれまで数多くのコドライバーと組んできた経験から、PNを聞き取るためのコツみたいなものを伝授しよう。

いいパートナー(コドライバー)が見つかり、PN走行の練習を繰り返す。コドライバーはうまく読め、ドライバーはうまく聞いて走れただろうか。うまくいったときもあるだろうし、どうしてもうまくいかないコースなんていうのも出てくるだろう。そんなときこそ、「なぜうまくいかないのか」、「どうしたらうまくいくのか」をディスカッションしよう。コドライバーにとって発音しにくい言葉でいつも読み間違えそうな場合には、別の言葉に変更するべきだろうし、聞き間違えたときは聞き間違えやすい表現を使っているのかもしれない。ただし、「聞いて走る」のに慣れていないうちはどんな表現でも聞きにくいはず。自分のレベルが“聞きとり初級”なのか“中級”以上なのかは客観的に判断したい。これらの例はほんの一例だ。

まずPNを読むときにイントネーションを意識することだ。初心者におけるイントネーションとは、危険な場所だけはほかの部分より強く発音してもらうというコーションノート(攻めるためのPNではなく、危険回避のためのもの)としての意味合いが強い。しかしここでいうイントネーションとは、全体を聞きやすくするメリハリをつけること。単調なお経よりはリズミカルな歌のほうが、生き生きと聞こえてくるのと同じだ。そういえば以前パートナーだったトニー・サーカムは、「ペースノートはポエムだ」と言っていたぞ。

また、似たような発音の言葉を連続して使わないことで、勘違いを回避できるようになる。英語の場合でいえば、時間的距離で使う→(イントゥー)は語尾のトゥが2(two)と発音が同じなので、私の場合も最初は聞きにくかったので「イン」に換えて読んでもらっていたこともあった。日本語でも限界走行をしているときに、思わず聞き間違えそうな表記はないか、もう一度チェックしてみる価値はある。

さらに直線距離の表現を変えるてみるのも一考。5m単位は複雑になるだけなので、必要ないが、130mと30mは「ひゃく」が聞こえなかった場合、混同する危険がある。こうした間違いの防止として、直線が100m以下は十のケタを偶数(60、80、100)にし、100mより長いときは奇数(110、130、150)にするのも一つの例だ。

足して引いて・・・シンプルなPNに

こうした創意工夫でPNの表現は
「足りなければ増やし、増やしてはシンプルに」と試行錯誤していくものだ。
が、ここにコツはある。

まず、日本の林道のようにコーナーが連続するようなところでは、すべての情報を細かく書いたとしても本番では一瞬に過ぎない。そのことをレッキ中は意識する必要がある。例えばコーナーとコーナーの間が40mでその間に小さなクレストがあったとしても、ほんの一瞬のことなのでクレストを発見したときにはすでに次のコーナーに飛び込む寸前だろう。こんなときクレストを省略したほうがいい。距離感覚がしっかりしていれば、手前にクレストがあっても「40」に対してすぐ次のコーナーに神経を集中できる(もちろんその場合はその距離をしっかりとイメージできていないとダメだが)。

それからコーナー中のラインやツイスティーな区間は言葉が多すぎると、ノートと実際の道の形状を照らし合わせながら走るだけで、攻めの走りをしなくなってしまう。こんなときはなるべく優先順位の低いものを省く勇気も必要で、日本の林道では特に重要になる。私が省略しにくい、優先度の高いものを挙げるなら「タイトゥン」と「ドントカット」になるかな。

先ほど「コーション」の連発は逆効果になると解説したが、無駄な「コーション」も存在する。
例えば「130 ! C 20 2R」といったPNなら、結構減速しないといけない場面。だからといってコーションをクレストの前につけるのはナンセンスだ。なぜならクレストの後の距離が20mならば、危ないと判断するのは当たり前だろう。こうした無駄にボキャブラリーを使うことがないようにしたい。もちろんこの20mや次のコーナー「2R」がスリッピ−だったりする特別な状況だったら「!」は必要だし、そこに至るまでの区間が非常にハイスピードセクションで、突然このPNが出てくるのような場合もペースをパッと変えるために「!」を使うのは有効だ。

ステージインフォメーション

最後に、ステージインフォメーション(補足)について記そう。ペースノートの各SSの前には、インフォメーションを書くといい。これは何でもいい。レッキのときにこのSSでパンクしたとか、フィニッシュ手前に狭い橋があるとか。それを糸口にしてスタート前にそのステージの特徴を思い出せるようになる。これで危険回避できるときもあるし、何より気持ちに余裕ができる。好みのSSっていうのも、書いておくと案外スタートからリズムがのることもある。

また誰でもノートの表現の仕方に悩む難しい道路形状というのが必ず出てくる。1回目のレッキのときに考えて考えて作ったPNを、2回目のレッキでまた書き直したら、結局一番最初の表現が良かったなんてこともある。が、こんな場所は実戦でこの場所を走ってもあまりノートとしっくりこないことが多い。このような難解な場所こそ、ステージインフォメーションに書いておくべきだ。レッキのときに表現に悩み抜いた挙げ句、ステージインフォメーションにもその詳細を書けば、大抵そのコーナーはその詳細まで覚えてしまうものだからだ。


(→ C → 2L) 
コーナーとコーナーの間が短いのにクレストがある場合。Cと入れるのが好ましいが、実戦向きPNのためには、さして危なくなければ省く勇気も必要。

(130 KR 60 5R)
ジャストライト(ちょい右)は使うのは悪くない。ただし、この場合のように長いストレートのあとに使うのは避けよう。なぜなら、長いストレートでスピードが乗ったときに、次のジャストライトがどのくらいの「ちょっと」なのがわからないくなるからだ。

(KL cut)
こういうカットを見逃さないように。特にスピードが乗っているときのちょっとしたコーナーではタイムアップに効果的だ。もちろんレッキ時にはカットしてもパンクしたりしないか十分確かめよう。

(! Ditch)
このような深いディッチはクルマを傷める可能性大。どれだけ減速すればいいかわかりにくいようなときには「Ditch・1速」とかギアを書いておくと減速の度合いが本番中でもわかりやすいだろう。

(100 5R narrow )
今まで広かった道幅が突然狭くなるような場所は、たとえわかりきっているようなときでも書いておくと本番中意外と走りやすい。実戦のハイスピードで突っ込んでいっても「ドキッ」としないために。

(bigC stay left)
日本じゃあまりお目にかからないがこのようなクレストは確かにクレストだが、通常のものとちょっと違う。実戦中驚かないためにも、また次のコーナーまでの距離をつかむためにもbigとかlongとで表すととイメージしやすい。

(lg5R/80)
比較的緩くて長いコーナーのような場合、コーナーの長さが重要になる。これを距離(今回は80mだった)で表す。

(JUMP)
クレストでも先が急激に落ち込んでいて、飛んでしまうものはJUMPと書いておく。レッキ時にしっかり実戦スピードをイメージすることが大事だ。実戦中思わず飛んでしまってクラッシュというのはトップドライバーでもよくある。

(3L<>)
このようなコーナーはライン取りすればひとつのコーナーになる。よく出てくる形状なのでどう表記するか決めておくとよい。このようなタイムアップのチャンスを見逃すな。

番外編(トップドライバーに話を聞いた・・・)

ロイクスのコドライバー、スミーツは、これまで説明してきたような英語によるナンバー式PN。一方とマキネンのコドライバーのマニセンマキは、ワード式のPNだった。ワード式PNとは数字の代わりに、イージーやスライトなどのコーナーのきつさを示す言葉を使っているもの。日本語ではさしずめ『きつい右』とか『チョイ左』ってところかな。このノートの特徴はコーナーきつさだけでなく、その長さも概念に入っているというところ。
 それから、プラス(アウトインアウトで道幅いっぱい使う)、マイナス(アウト・イン・インのラインどり)など、補助語を使ってラインどりを常に書くようにしているようだ。つまり彼らのシステムは正確に路面の形状を表すというより、むしろ走り方を重視して表現したPNといってもいいかもしれない。さらに、スモールクレストなどの発音は長いがよく出てくるような地形は、例えば「H」(ハンプって発音していたような……)のように一つの記号、一つの言葉にしているらしい。2つ以上の情報が一つになっているなんて、日本の林道のようにコーナーが連続しているようなときは一瞬のうちに多くのインフォメーションをイメージできるこの方法は非常に効果的かもしれない。これはもらった!

 

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